2012年11月21日
第9話 遠州灘の海鳴り・波小僧
遠州七不思議の一つにも数えられ、環境庁の「残したい日本の音風景100選」にも選ばれている「遠州灘の海鳴り・波小僧」。御前崎市~浜松市~湖西市、そして愛知県までひろがる遠州灘一帯に打ち寄せる波は、とても不思議な海鳴りを発しているそうです。とくに天候の変わり目には一段と高い波音をたて、聞こえる方向や音の高低により、天候を予知できるといわれています。音が西に聞こえる時は“晴れ”、東に聞こえる時は“雨”、極端に東に行き音の高い時は“嵐”になるとか…。
それは、むかしから語り継がれる言い伝えが関係しているのです。

浜岡砂丘の入口に建つ波小僧の像(写真提供:御前崎市)
御前崎の「波小僧」
ある日、漁師が海で漁をしていると、波小僧が網にかかっていました。漁師がこれを捕らえて殺そうとすると、波小僧は、「どうぞ命だけはお助けください。そのお礼として、これからあなた方に大切な雨と嵐をお知らせしますから」と命乞いをしました。漁師は波小僧を助けてやり、それ以来、雨や嵐の時は必ずその前の波の音が聞こえるようになったといわれています。
御前崎市にある「浜岡砂丘」には、この波小僧の像が建てられています。浜岡砂丘は太平洋側最大級の砂丘地帯。遠州灘特有の強い風によって砂丘の上に風紋がつくり出され、とくに夕日に照らされる時間は芸術作品のような美しさを醸し出すのです。きらきらと輝く海もまた美し。

御前崎市の海岸線に続く広大な「浜岡砂丘」(写真提供:御前崎市)
舞阪町の「浪小僧」
浜松市西区舞阪町にはまた別の浪小僧の像があります。あえて異なる漢字を使って区別しているのでしょうか。
こちらの言い伝えもほぼ同じですが、像の土台に書かれているお話の描写がより詳しくておもしろいのです。
むかし、遠州灘の浜では地引網漁が行われていました。魚がとれない日が続いたある日、真っ黒な小僧が網にかかりました。漁師たちは気味悪がり小僧を殺そうとすると、小僧は「私は海の底に住む浪小僧です。命だけはお助けください。その代り、ご恩返しに、海が荒れたり、風が強くなったりする時は、海の底で太鼓をたたいてお知らせします」と言うので、海にもどしてやりました。それ以来、天気の変わる時、波の音がするようになったと伝えられています。
海の底で太鼓をたたく浪小僧の姿を想像すると、かわいらしくて微笑ましい気持ちになります。漁師さん、助けてくれてありがとう。もし、あの時、浪小僧にひどいことをしていたら、どうなっていたか…。見た目もおそろしい妖怪となり、いろんな悪さをしたに違いありません。遠州灘の美しい海岸線を見たら、ちょっとだけ、浪小僧のことを思い出してくださいね。
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第1話 富士かぐや姫伝説 / 第2話 大瀬神社の神池
第3話 富士山三姉妹 / 第4話 遠州天狗伝説
第5話 羽衣伝説 / 第6話 函南「猫おどり」
第7話 野守の池の悲恋伝説 / 第8話 ダイダラボッチ伝説
第9話 遠州灘の海鳴り・波小僧 / 最終話 徳川家康公伝説
それは、むかしから語り継がれる言い伝えが関係しているのです。

浜岡砂丘の入口に建つ波小僧の像(写真提供:御前崎市)
御前崎の「波小僧」
ある日、漁師が海で漁をしていると、波小僧が網にかかっていました。漁師がこれを捕らえて殺そうとすると、波小僧は、「どうぞ命だけはお助けください。そのお礼として、これからあなた方に大切な雨と嵐をお知らせしますから」と命乞いをしました。漁師は波小僧を助けてやり、それ以来、雨や嵐の時は必ずその前の波の音が聞こえるようになったといわれています。
御前崎市にある「浜岡砂丘」には、この波小僧の像が建てられています。浜岡砂丘は太平洋側最大級の砂丘地帯。遠州灘特有の強い風によって砂丘の上に風紋がつくり出され、とくに夕日に照らされる時間は芸術作品のような美しさを醸し出すのです。きらきらと輝く海もまた美し。
御前崎市の海岸線に続く広大な「浜岡砂丘」(写真提供:御前崎市)
舞阪町の「浪小僧」
浜松市西区舞阪町にはまた別の浪小僧の像があります。あえて異なる漢字を使って区別しているのでしょうか。
こちらの言い伝えもほぼ同じですが、像の土台に書かれているお話の描写がより詳しくておもしろいのです。
むかし、遠州灘の浜では地引網漁が行われていました。魚がとれない日が続いたある日、真っ黒な小僧が網にかかりました。漁師たちは気味悪がり小僧を殺そうとすると、小僧は「私は海の底に住む浪小僧です。命だけはお助けください。その代り、ご恩返しに、海が荒れたり、風が強くなったりする時は、海の底で太鼓をたたいてお知らせします」と言うので、海にもどしてやりました。それ以来、天気の変わる時、波の音がするようになったと伝えられています。
海の底で太鼓をたたく浪小僧の姿を想像すると、かわいらしくて微笑ましい気持ちになります。漁師さん、助けてくれてありがとう。もし、あの時、浪小僧にひどいことをしていたら、どうなっていたか…。見た目もおそろしい妖怪となり、いろんな悪さをしたに違いありません。遠州灘の美しい海岸線を見たら、ちょっとだけ、浪小僧のことを思い出してくださいね。
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第1話 富士かぐや姫伝説 / 第2話 大瀬神社の神池
第3話 富士山三姉妹 / 第4話 遠州天狗伝説
第5話 羽衣伝説 / 第6話 函南「猫おどり」
第7話 野守の池の悲恋伝説 / 第8話 ダイダラボッチ伝説
第9話 遠州灘の海鳴り・波小僧 / 最終話 徳川家康公伝説
Posted by eしずおかコラム at 12:00
2012年11月07日
第8話 ダイダラボッチ伝説
日本各地でさまざまな言い伝えが残る巨人“ダイダラボッチ”。アニメ「もののけ姫」ではシシ神の夜の姿としても登場します。ダイダラボッチは、山や湖や沼などを作ったという伝説が多く、国づくりの神であったともいわれています。
静岡市には足跡が
静岡市葵区富厚里(ふこうり)にある『ダイラボウ』。標高561メートルの山頂に全長150メートルほどの窪みがあり、これはダイダラボッチが富士山を作るために、琵琶湖を掘った土を運ぶ途中にのこした足跡だといわれています。

細い山道の先にある入口の案内板
ダイラボウ山頂は、藁科川、新東名高速道路、静岡市街、富士山まで見渡せる絶景スポット。新東名の静岡SAのスマートICを降り、ずんずん北上していくと“ダイラボウ”の案内板が見えてきます。さらに細い山道をくねくね、くねくねと登り、「本当にこの道で合ってるのだろうか…」と不安になった頃、山の斜面に“ダイラボウ入口”の案内板があり、“山頂まで1200m 徒歩50分”と書いてあるではありませんか!しかもどこをどう登ればよいのかわからない急斜面。運動不足の私の足で登るのはムリと判断し、車で行ける道はないかと探してみると、“林道ダイラボウ線”の看板を発見!意気揚々と進むも、数日前の天候不良もあって、その先はプチ土砂崩れ状態で危険なムードが漂っていたため断念。現在、この林道は整備中で、まもなく快適に走れるようになります。

「ダイラボウ」山頂からの眺め 写真提供:静岡市
浜名湖は、手をついた跡?
もうひとつ、遠州にもダイダラボッチ伝説が残ります。遠州の山奥に住んでいたダイダラボッチが、子どもたちを手にのせて歩いている時に、山をまたいだ拍子によろけて、子どもたちを投げ出してしまいました。その時に手をついてできた窪みに、びっくりした子どもたちとダイダラボッチの流した涙が流れ込んで『浜名湖』ができたといわれています。確かに、浜名湖は入りくんでいて、手の形に見えなくもありません。また、浜名湖に浮かぶ『礫島』(つぶてじま)は、ダイダラボッチが食べていたにぎりめしの中に入っていた小石を投げてできたものだとか。さらに、浜名湖近くの姫街道には、ダイダラボッチの足跡とされる池も残っています。

「浜名湖」はダイダラボッチの手の跡?!
山や湖などの地形の成り立ちを、ダイダラボッチという巨人の仕業とした、はるか昔の人々のロマン。一生懸命に琵琶湖を掘り、こぼさないように土を運び、よろけながらも富士山を作ろうとした、大きな男の姿を想像しながら、この伝説を語り継いでいきたいものです。
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第9話 遠州灘の海鳴り・波小僧 / 最終話 徳川家康公伝説
静岡市には足跡が
静岡市葵区富厚里(ふこうり)にある『ダイラボウ』。標高561メートルの山頂に全長150メートルほどの窪みがあり、これはダイダラボッチが富士山を作るために、琵琶湖を掘った土を運ぶ途中にのこした足跡だといわれています。
細い山道の先にある入口の案内板
ダイラボウ山頂は、藁科川、新東名高速道路、静岡市街、富士山まで見渡せる絶景スポット。新東名の静岡SAのスマートICを降り、ずんずん北上していくと“ダイラボウ”の案内板が見えてきます。さらに細い山道をくねくね、くねくねと登り、「本当にこの道で合ってるのだろうか…」と不安になった頃、山の斜面に“ダイラボウ入口”の案内板があり、“山頂まで1200m 徒歩50分”と書いてあるではありませんか!しかもどこをどう登ればよいのかわからない急斜面。運動不足の私の足で登るのはムリと判断し、車で行ける道はないかと探してみると、“林道ダイラボウ線”の看板を発見!意気揚々と進むも、数日前の天候不良もあって、その先はプチ土砂崩れ状態で危険なムードが漂っていたため断念。現在、この林道は整備中で、まもなく快適に走れるようになります。
「ダイラボウ」山頂からの眺め 写真提供:静岡市
浜名湖は、手をついた跡?
もうひとつ、遠州にもダイダラボッチ伝説が残ります。遠州の山奥に住んでいたダイダラボッチが、子どもたちを手にのせて歩いている時に、山をまたいだ拍子によろけて、子どもたちを投げ出してしまいました。その時に手をついてできた窪みに、びっくりした子どもたちとダイダラボッチの流した涙が流れ込んで『浜名湖』ができたといわれています。確かに、浜名湖は入りくんでいて、手の形に見えなくもありません。また、浜名湖に浮かぶ『礫島』(つぶてじま)は、ダイダラボッチが食べていたにぎりめしの中に入っていた小石を投げてできたものだとか。さらに、浜名湖近くの姫街道には、ダイダラボッチの足跡とされる池も残っています。
「浜名湖」はダイダラボッチの手の跡?!
山や湖などの地形の成り立ちを、ダイダラボッチという巨人の仕業とした、はるか昔の人々のロマン。一生懸命に琵琶湖を掘り、こぼさないように土を運び、よろけながらも富士山を作ろうとした、大きな男の姿を想像しながら、この伝説を語り継いでいきたいものです。
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第3話 富士山三姉妹 / 第4話 遠州天狗伝説
第5話 羽衣伝説 / 第6話 函南「猫おどり」
第7話 野守の池の悲恋伝説 / 第8話 ダイダラボッチ伝説
第9話 遠州灘の海鳴り・波小僧 / 最終話 徳川家康公伝説
Posted by eしずおかコラム at 12:00